[PR]口が臭う人の共通点…:臭いが見える対策は?

 私がお兄ちゃんと血が繋がっていないことを知ったのは偶然だった。お父さんがお兄ちゃんと話をしていたのを聞いてしまったのだ。私は養子だった。そのことを聞いた瞬間、私は思わず微笑んでしまった。お兄ちゃんと血が繋がっていない。お兄ちゃんと血が繋がっていない。その日から私はお兄ちゃんを男として意識するようになった。お兄ちゃんは優しい。でも、それは私が妹だからだ。妹でない私はお兄ちゃんにとってどういう存在なのだろうか。
「乃絵美、今日は帰るのが遅くなるから」「どうして?」「ん、友達の家でビデオを見てくる」「わかった」「じゃな」
 お兄ちゃんがいなくなった家は廃墟だ。テレビがやかましい騒音を奏でている。お客様は私を厭らしい眼で見る。気持ち悪い。気持ち悪い。仕事を手伝う時間はいつも苦痛だ。何か失敗をしないか、お客様が怒らないかといつも心配してしまう。テレビの音がうるさい。お客様がニヤニヤと私のことを見つめる。お父さんは遠くを見つめながらコーヒーを入れている。どうしようもない平和が店内を包んでいる。小便をもらしそうになる。ここは嫌だ。臭い。臭い。お兄ちゃんの匂いがしない。お兄ちゃんの匂いが腐った豚の匂いに消されてしまう。どうしようもない。あの、だれだかよくわからない女の子二人組みは今日も私を見て笑う。ああ、勝ち誇った笑み。しかし、彼女たちは知らない。私はお兄ちゃんと血が繋がっていない。血が、繋がっていない。
「ただいま」「おかえりなさい」「めしはいいや」「そう」「きょうは、もう、寝る」「お風呂は?」「いいや、明日の朝入る」「わかった。おやすみなさい」「おやすみ」
 お兄ちゃんが部屋に入っていった。今日こそ。今日こそ。私は自室に入り、机の中に隠していたコンドームを取り出す。今日こそ。ああ、私は狂っている。狂っている。でも、この気持ちは、お兄ちゃんに抱かれたい気持ちは真実だ。血が繋がっていないんだもの。血が繋がっていないんだもの。私は、ゆっくりと、お兄ちゃんの部屋の扉を開けた。
「お兄ちゃん…」
 きもちのいいことをしましょう。きもちのいいことをしましょう。なにも、やましいことなんかないの。だって、私たちは血が繋がってないのだから。お兄ちゃんはヘッドホンをつけて音楽を聴いている。私が入ってきたことに気がついていないようだ。そう、私は空気のような存在。そう、妹は空気のような存在。それも、もう終わり。私はゆっくりと、店の制服のボタンに、手を、手をかけた。

おしまい


[PR]中古車探しは、ガリバー:在庫多数、全車保証つき!